セールステックツールの国内市場規模 ~導入や活用を妨げる要素とは~
日本でもITやテクノロジーを活用して営業活動を効率化する「セールステック」がようやく注目されるようになってきました。
すでにセールステックを導入して、営業活動の生産性を上げている企業もどんどん出て来ましたね。
とはいえ、日本におけるセールステックの導入企業はまだ少なく、生産性を上げるためには導入を妨げる要素の解決が不可欠です。
今回は、セールステックの国内外の市場規模を確認しつつ、導入時の課題などについてみていきます。
目次[非表示]
- 1.セールステックとは
- 1.1.セールステックが注目されている理由
- 1.2.主要ジャンル・サービス
- 1.2.1.MA
- 1.2.2.オンライン商談
- 1.2.3.CTI・電話アプリ
- 1.2.4.SFA
- 1.2.5.カスタマーサポート
- 1.2.6.ペーパーレス
- 1.2.7.グループウェア
- 1.2.8.BI
- 1.2.9.セールスイネーブルメント
- 1.2.10.ローコード/ノーコード開発
- 2.セールステックの国内市場規模について
- 2.1.国内市場規模
- 2.2.世界と比べて遅れている?
- 3.なぜ国内ではセールステック市場が伸び悩むのか?
- 3.1.企業のリテラシーが追いついていない
- 3.2.導入効果が見えにくい
- 3.3.販売価格と企業規模が合わない
- 4.セールステックの導入・活用で求められること
- 4.1.専任のツール管理者を設ける
- 4.2.ツールに合わせた業務フローの変更
- 4.3.営業が使いこなすスキルを身につける
- 5.セールステックツールを使いこなそう
セールステックとは
セールステックはもともと「Sales(営業)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。
業種別に様々な「○○テック」が出てきていますね。
今回はセールステックがどのようなものなのか、その概要を説明します。
セールステックが注目されている理由
日本では労働人口の減少が社会問題になっており、セールステックの導入による業務効率化や省人化を実現することで、営業リソース不足の解決に期待が集まっています。
そこで、営業フローの最適化や可視化をして営業の効率化を図れるのがセールステックツールです。
また、営業活動は営業の経験や勘などが重視される傾向がいまだにあり、スキルや業務が属人的になる点が問題でした。
スキルやノウハウを社内全体で共有できるセールステックツールにより、営業活動の属人化を防ぎ、営業全員のレベルアップ・全体の営業標準化につなげられるということですね。
こうした理由から、日本でもセールステックが注目を集めています。
主要ジャンル・サービス
株式会社インターパークがリリースした「Sales Tech」のカオスマップ2020に基づいて、セールステックの主要ジャンルとサービスを紹介します。
出典:株式会社インターパーク 「Sales Tech」のカオスマップ2020
MA
内勤営業であるインサイドセールスを効率化するソリューションとして活用されております。
MA(Marketing Automation)とは、様々なマーケティング業務を効率化、自動化するツールです。
マーケティング部門やフィールドセールス部門とインサイドセールス部門の連携が必須になったことから、MAツールのニーズが高まっています。
主なサービスとしては、「Marketo」や「SATORI」、「Hubspot」などがあります。
オンライン商談
オンラインで商談を行なう、いわゆるWeb会議システムのソリューションです。
「Zoom」や「bellface」をはじめ「Microsoft Teams」など、すでに利用されている方も多いでしょう。
CTI・電話アプリ
CTI(Computer Telephony Integration)とは、電話とPCを連携させることで業務を効率化するソリューションです。
通話記録や録音、顧客情報の管理まで総合的に行なえるサービスがあり、スマホでも利用できるサービスが数多くあります。
代表的なサービスとして、「MiiTel」や「zendesk talk」、「Lala Call」、「BIZTELL」、「モバビジ」、「Rakutenでんわ」などが挙げられます。
SFA
SFA(Sales Force Automation)とは「セールスフォース」と呼ばれる、営業活動の進捗や管理を行なうツールです。主なサービスとしては、「Salesforce」や「JUST.SFA」、「Sales Cloud」などが挙げられます。
カスタマーサポート
顧客の問い合わせやクレームを受けつけるカスタマーサポートの課題解決や最適化を行なうソリューションです。最近は、チャットボットのツールが増えています。
代表的なサービス事例は、「CScloud」や「HelpScout」「INTERCOM」「Tayori」などです。
ペーパーレス
電子署名や手書きの文字をデジタル化できるOCR、AIというような、ペーパーレス化を促進するソリューションです。
単にペーパーレス化するだけでなく、リモートワークが実現できる点もポイントです。
ペーパーレスの代表的なサービスとしては、「クラウドサイン」や「DocuWorks」、「Evernote Scannable」、「Sansan」、「WANTEDRY PEOPLE」、「アルテマブルー」などがあります。
グループウェア
グループウェアとは社内メンバー間で情報を共有するツールです。テレワークが増え最近は導入企業が増えていますが、営業活動においても有効活用されています。
グループウェアのサービスとしては、「G Suite」や「GRIDY」、「Garoon」、「GROUPSESSION」などが代表的です。
BI
BI(Business Intelligence)とは、企業が保有するデータをユーザーが利用しやすいように加工、抽出するためのツールになります。データドリブンが重要なインサイドセールスにおいては、必要不可欠なツールです。
BIの代表的なサービスは、「Actionista!」や「LaKeel BI」、「MicroStrategy」などがあります。
セールスイネーブルメント
「セールスイネーブルメント」とは営業活動の履歴や顧客情報を可視化して、業務最適化を行う取り組みです。
MAやSFAと組み合わせて活用することで、生産性向上に役立てることが可能です。
セールスイネーブルメントのサービス事例としては、「ABookBiz」や「Handbook」「smartsheet」、「PITCHER」などが挙げられます。
ローコード/ノーコード開発
ローコード開発とは最小限のプログラミング知識でアプリやソフトが開発できるソリューションです。
一方、ノーコード開発は文字通りコードが不要で、ITやプログラムの知識がない方でも開発が行なえるソリューションもあります。
代表的なサービスは「Kintone」や「Adalo」、「Amazon Honeycode」、「yappli」です。
セールステックの国内市場規模について
セールステックの国内市場規模を、海外とも比較しながら確認してみましょう。
国内市場規模
日本では今伸び盛りの市場であるため、現在セールステック全体の国内市場規模を示すデータはありませんが、セールステックツールのなかでも代表的なCRMとMAの国内市場データを紹介していきます。
「IDC Japan」が調査したCRMの国内市場予測によると、2018年で1,572億1,400万円ですが2023年には2,079億8,000万円になるとのことです。
出典:IDC Japan 株式会社 2018年の日本のCRM市場規模
一方、「矢野経済研究所」が発表したMAの国内市場規模は、2018年で390億円、2024年には940億円になると予想されています。
出社がなくなった企業が出てきたり、オンライン商談が主流になったり、リモートワークでそれぞれ異なる場所から営業活動をしたり…
大きな変化があった2020年を節目にこれからも一気に伸びていくことが予想されています。
世界と比べて遅れている?
海外におけるセールステック市場は2000年以前より登場しており、アメリカの調査会社「CB Insights」によると、2016年の段階でセールステックのスタートアップへの投資額が史上最高に達したそうです。
大手調査会社の「ガートナー」は、2017年にCRMのグローバル市場規模が前年比15.5%増の421億ドルと発表しています。
一方、「Marketing Automation Market」は、2019年のMAのグローバル市場が33億ドル、2024年には64億ドルまで成長すると発表しました。
出典:Marketing Automation Market「Marketing Automation Market worth $6.4 billion by 2024」
なお、セールステックのグローバルカオスマップは、以下の通りです。
なぜ国内ではセールステック市場が伸び悩むのか?
日本でセールステックが浸透しにくい理由には、以下のような課題があります。
企業のリテラシーが追いついていない
日本でセールステックが浸透しない大きな理由のひとつが、企業側のITリテラシーの低さと言われています。
また、現場のオペレーションを変更しなければならない場合、現場側で導入準備をする工数負担を感じ、ITツールの導入時に明確な現場メリットが提示されないとなかなか導入につながらないのが現状です。
セールステック関連のITツールやソリューションを導入する際には、事前に導入目的やメリットはもちろんのこと、現場の営業でも利用しやすいサービスを選ぶことが重要です。
導入効果が見えにくい
セールステックのITツールやソリューションは、導入したからといっていきなり収益が上がるものではありません。
そのため、一部業務効率化のためにITツールを導入しても効果が見えづらい場合もあります。
例えば、まだそれほど顧客がいない企業がCRMツールを導入しても、ほとんど効果はないでしょう。
解決したい社内の課題がクリアになっていない場合は、セールステックの導入がなかなか進まないためおすすめしません。
セールステックに限らずですが、流行に任せるのではなく目的はなにか明確にしたうえで、社内の課題解決につながるITツールやソリューションの導入を検討しましょう。
販売価格と企業規模が合わない
セールステック関連のITツールは、現状残念ながらコストが企業規模にマッチしていない状況です。
大企業や大手メーカーであれば導入メリットもありますが、小規模事業者になると最適なツールやソリューションが見つからない点が課題といえるでしょう。
ただ、これから安価で汎用性の高いITツールやソリューションもそういった事業規模向けに登場してくるのではないかと考えられます。
セールステックの導入・活用で求められること
社内にセールステックを導入して有効活用するためには、以下のポイントに留意して進めるようにしましょう。
専任のツール管理者を設ける
セールステックを導入する際には、専任のツール管理者を設けることが必須です。
MAツールやSFA、BIツール、CRMツールなどを有効活用するためには、それなりのスキルや経験が必要になります。
ツール未経験の方がいきなり使いこなすのは困難です。
なのでツールの使い方を熟知し、現場で使用する営業に教育できるレベルの管理者が必要です。
また、実運用に入るとさまざまなトラブルが発生することが予想されるので、定期的にメーカーと調整しメンテナンスが行えるスキルも必要になります。
ツールに合わせた業務フローの変更
セールステックを導入して効果を上げるためには、ツールの導入だけでは不可能です。各種ツールに合わせた業務フローの変更を行なう必要があります。
例えば、CRMツールを導入しても適宜、顧客情報の登録や更新をしなければ高い効果を得ることはできません。
CRMツール自体、顧客アプローチの度に必ず情報を更新していくことで効果が発揮されるものです。そのために業務フローの追加や変更を行います。
しかし、従来の働き方から脱却できない場合や、作業が面倒だという理由で新たな業務フローが実施できなければ意味がないのです。
よって、ツールを導入する際には、その効果や目的の説明はもちろん、新たな業務フローの順守を営業に実践させることが重要になります。
営業が使いこなすスキルを身につける
SFAやMA、BIツールなどは不慣れな方にとっては扱いにくい印象を与えるため、ツールを触りたがらない営業も多いものです。
しかし、最近のツールはITやプログラムの知識がない非プログラマーでも利用できるUI・UXを備えたものも増えています。
適切な使い方を覚えれば誰にでも利用できるものが多くなってきています。
とはいえ業務で使いこなせるようになるためには、それなりの知識や業務経験が必要です。
よって、ツールが使いこなせるようなスキルを習得できるように、営業を育成する体制の構築もセールステック導入になくてはならない要素といえます。
セールステックツールを使いこなそう
セールステックの導入に関しては、まだまだ若干ハードルが高い部分がある点が否めません。
自社に担当者が置けるようであれば、運用ルールや方針を設計をしたうえで導入してみるのもいいかもしれません。
しかし、自社にそういった人材がいない・もしくは兼業になってしまい専任が置けない場合は、外部の導入コンサルティングを活用することや、SFAやCRMを得意とする営業全体をアウトソースすることも選択肢としてあるので、さまざま検討してみてください。
インプレックスアンドカンパニーでは、セールステック導入・運用時のサポートを実施しております。
例えば、営業組織分析や略構築、リード獲得、商談というような体制構築のサポートを含めワンストップでお任せいただけます。
セールステックの導入にご興味がある方は、ぜひインプレックスアンドカンパニーまでお気軽にご相談くださいませ。