営業のデジタル化における課題と解決方法。最適な営業組織を構築するためには?
企業の営業活動において急速にデジタル化が進んでいます。
少子高齢化による労働人口の減少や新型コロナウイルスの影響、人々の購買行動も大きく変容してきており、営業活動のデジタル化の必要性が高まっている状況です。
しかし、営業のデジタル化を進めるにあたっては、国内企業特有の課題を解決する必要があります。
そこで今回は、営業のデジタル化における課題と解決方法をご紹介しますので、最適な営業組織を構築するためのヒントにしてもらえれば幸いです。
目次[非表示]
- 1.営業のデジタル化が推進されている背景
- 2.営業のデジタル化で得られるメリット
- 2.1.業務の負担が軽減される
- 2.2.顧客育成しやすい
- 3.営業のデジタル化での課題
- 3.1.現場のITリテラシーが低い
- 3.2.導入効果を実感できない
- 3.3.管理者不在になりがち
- 4.営業のデジタル化を進めるには?
- 4.1.営業プロセスや戦略の見直し
- 4.2.営業組織の再構築
- 4.3.セールスイネーブルメントの実現
- 5.営業のオンライン化はこれからのニューノーマル
営業のデジタル化が推進されている背景
DXの流行
現在、働き方改革推進のため、政府は国内企業に対してDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している状況です。
経済産業省は「DX 推進指標」とそのガイダンスにおいて、DXの定義を以下のように定めています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
出典:経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス
要約すると、DXとは「デジタル技術の活用で事業や体制などを改革し、生産性や競争力を上げる取り組み」ということです。
政府がDXを推進する理由の1つが、少子高齢化による労働人口の減少です。
DXによる業務効率化を行い、労働者1人あたりの生産性を上げることが急務な課題といえます。
2つめの理由として、国内企業が抱えるレガシーシステムからの脱却が考えられます。
現在、国内企業の多くが大規模で複雑なシステムを使って事業を展開しているため、ちょっとした業務フローの改修でも大きな費用と工数が必要な状況にあります。
また、社内システムは数年にもわたって改修を繰り返していることもあり、以前の担当者が不在になることも多く、ノウハウがブラックボックス化している企業も多くなっています。
そのため、国内企業がデジタル化を推進するためには、個別最適されたレガシーシステムからの脱却が必須といえます。
なお、経産省は2018年9月に「国内企業からレガシーシステムから脱却できなかった場合、2025年以降に最大で12兆円の経済的損失を被るだろう」と提言しています。
これが「2025年の壁」と呼ばれる課題です。
こうした理由からDX推進の一環として、営業のデジタル化を進める国内企業が増えています。
出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
購買行動の変化
顧客の購買、決裁までの行動がWeb上で完結することが増えたことも、DX推進が加速する理由のひとつです。
顧客の購買行動の変化によって、従来のような顧客先へ赴いて行なう対面型の営業スタイルだけでなく、オンライン上で商談を行なう企業も増えています。
また、顧客はBtoBのソリューションに関する説明を企業のホームページなどで確認できるため、営業から不足情報をヒアリングできるだけで購入/利用を検討することが容易になります。
購入や導入に至るプロセスの約60%が、Web上の情報である程度まで検討や決断を進めてしまうのは有名な話ですね。
BtoBのソリューションについても、デジタル化によって営業がこれまで担っていた役割の一部が削減され始めている状況といえます。
営業効率化の流れ
前述した顧客の購買行動の変化に伴い、商談が成立するまでの期間も非常に短くなりました。
そのため従来のフィールドセールスのように、アポをとって取引先に赴き商談を行なうスタイルではスピード感が合わなくなってきています。
顧客にとって最適な提案を適切なタイミングにできなければ、商機を逃してしまいます。
よって、営業に関わるすべての業務をデジタル化して効率化することで、業務スピードを上げることが企業側には求められているのです。
テレワークの普及
新型コロナウイルスの影響で、テレワークが普及したことも営業のデジタル化が進む一因といえます。
特に緊急事態宣言中は、顧客先に直接訪問する営業が行えなかったこともあり、Web会議システムを用いたオンライン商談を実施せざるを得ない状況でした。
また、ITツールを活用しながら、電話やメールなどでインサイドセールスを実施する企業も増えています。
フィールドセールスによる営業のみ行う企業は、かなりのビハインドになるためデジタル化が急務な課題といえるのです。
営業のデジタル化で得られるメリット
営業のデジタル化で業務効率化が実現することで得られるメリットをご紹介します。
業務の負担が軽減される
営業のデジタル化によって業務効率化や自動化を行なうことにより、営業マンの負担軽減が可能です。
例えば、オンライン商談を行えば、
・取引先への移動時間の削減
・移動に伴う交通費の削減
・移動時間に別の商談を実施可能
・テレワークで実施できるため大きなオフィスが要らず家賃カットも可能
などのメリットがあります。
よって、営業の負担が下がるだけでなく、販管費も下げながら商談数を増やし、生産性を上げられるのです。
また、RPA(Robotics Process Automation)やAI、OCR(Optical Character Reader:手書きの文字をデジタル化できるソリューション)などを活用することで、各種経理業務や日報などの報告業務、契約業務の多くを自動化できるため大幅に工数を削減することができるでしょう。
業務効率化によって空いた時間はコアな営業活動や、これまでやりたくても行えなかった業務に割くことができます。
この点についても営業をデジタル化する大きなメリットです。
顧客育成しやすい
営業のデジタル化により、顧客育成がしやすくなり商談の成約率を上げられます。
CRM(Customer Relationship Management)ツールやSFA(Sales Force Automation)ツールで顧客データを共通管理し、MA(Marketing Automation)ツールを使ってマーケティングを最適化できれば、顧客が望む提案を最適なタイミングで実施できるようになります。
そうすることで顧客と継続してコミュニケーションをとることが可能になり、見込顧客への育成がしやすくなるのです。
しかし、ツール導入を行うにも、詳しい人材や導入リソースを割くことになるため注意が必要です。
営業のデジタル化での課題
営業のデジタル化が進まない原因としては、国内企業特有のITリテラシーの低さやデジタル人材不足などが挙げられます。
現場のITリテラシーが低い
国内企業の多くは、ITやテクノロジーの知識を持つデジタル人材が決して豊富とはいえない状況と言われています。
また、営業部門にはITやテクノロジーが苦手というスタッフが多く、現場のITリテラシーが特に低い傾向にあり、デジタル化が進みづらい要因となっているようです。
そのため国内企業が営業のデジタル化を行う際には、デジタル人材の採用や育成が必須です。
もしくは、営業代行会社などを利用して、デジタル人材をアウトソースすることもひとつの方法です。
導入効果を実感できない
セールステックを導入しても思ったような効果が実感できない点も、国内企業における営業のデジタル化が進まない要因になっています。
デジタル人材不足が課題である国内企業では、CRMツールやSPAツールというようなセールステックを導入しても上手く運用できないケースも多くあります。
また、DXという言葉が流行した影響で、なんとなくセールステックを導入しろと経営者から指示を受け、ただITツールを導入しただけに留まっている企業も散見されます。
デジタル人材が不在の場合は、ITツールを導入しても有効活用できず、最悪の場合は以前より作業工数が増えるという残念な結果になることもあるようです。
ちなみに、「IDC Japan」が2019年に発表した「国内企業を対象としたデジタルトランスフォーメーションの動向調査結果」の中でも、DX推進がストップしていたり中止になったりしている企業が3割程度見られます。
出典:IDC Japan 国内企業のデジタルトランスフォーメーション動向調査結果
管理者不在になりがち
ITツールやサービスなどを管理する担当者を決めていない、または管理できていない企業が多い点も、国内企業で営業のデジタル化が進まない原因のひとつです。
・デジタル人材が慢性的に少ない
・選任の営業のデジタル化推進組織をつくらず営業マンが片手間にDXのプロジェクトを行う
などの企業が多いことが理由と考えられます。
そのため、ITツールの管理やメンテナンス、トラブル対応ができず、思ったような効果が得られないのです。
ITツールやサービスの管理者になれる人材の採用や育成はもちろん、導入後のサポートが手厚いITツールのベンダーを選ぶことも営業のデジタル化を進めるうえで大切な要素といえるでしょう。
営業のデジタル化を進めるには?
国内企業が営業のデジタル化を進めるためには、前述した課題を以下の方法で解決することが必須となります。
営業プロセスや戦略の見直し
営業のデジタル化を推進する場合は、まず現在の営業体制の課題を抽出しましょう。
また、課題を解決するために、営業プロセスや戦略の見直しを行う必要があります。
セールステックは営業活動をデジタル化して、業務効率化や生産性を上げるための手段です。
よって、自社の課題解決ができるITツールを導入できなければ、大きな効果は期待できませんが、目的に沿ったセールステックを選定し導入することで、従来の営業に関する業務フローが大きく変化する可能性が高くなります。
まずは最も効率的な営業プロセスになるように根本的な業務フローを見直し、営業プロセスの変化に合わせ、営業戦略の見直しも行ないましょう。
営業のデジタル化の最終目的である生産性や競争力向上による収益増加を達成するためには、セールステックを導入するだけでは不十分で、営業プロセスや戦略を見直し最適化も併せて行うことが必須です。
営業組織の再構築
営業のデジタル化を推進する際には、専任のDX推進チームをつくり、営業組織の再構築を行なうべきです。
業務プロセスや営業戦略の見直しができたら、それに合わせた最適な営業組織の構築が必要になります。
DX推進チームが主管となって、ITツールの導入部門や運用方法、担当者のアサインや育成なども含め、組織をあるべき姿に再構築しましょう。
例えば、フィールドセールス部門に限る営業組織の場合は、マーケティング部門やインサイドセールス部門を新設するなど、役割分担を図ることも必要になります。
セールステックを導入して業務をデジタル化すると同時に、「マーケティング→見込顧客の育成→商談」という部門ごとの役割を決めたうえで、シナジーが上がる営業組織への再構築が営業デジタル化を成功させるためのマスト事項です。
ただし、DXチームにアサインできる人材がいない場合は、外部から採用するか営業代行会社などに相談する必要があるでしょう。
セールスイネーブルメントの実現
営業のデジタル化を成功させるためには、セールスイネーブルメントの実現が不可欠です。
「セールスイネーブルメント」とは「営業活動を促進させる仕組み」という意味の言葉になります。
営業のデジタル化を推進することで、
・営業プロセスや戦略の見直し
・営業組織の再構築
を実施します。
営業活動や顧客管理というようなあらゆるプロセスを、CRMツールやSPAツールなどで可視化することで、客観的かつ定量的に評価できる仕組みの構築することが、セールスイネーブルメントです。
また、トップ営業のスキルを可視化できれば、営業組織に共有することでスキルの平準化が図れるため、全体のスキルアップにつなげることができるでしょう。
セールスイネーブルメントを実現することで、営業活動のPDCAを継続的に回すことが可能になり、業務効率化や生産性の向上が継続的に行なえるようになります。
これにより、競争力を高め収益拡大につなげることが営業のデジタル化の究極目標といえるのです。
営業のオンライン化はこれからのニューノーマル
営業のデジタル化を困難にしている原因の多くが、デジタル人材の不在といえます。
しかし、変化の速い市場に対応していくためには、営業のデジタル化推進は急務といえます。
業務効率化はどうしても、後手後手になってしまう傾向にありますが、場合によっては今進めることで事業に大きく寄与する可能性を秘めています。
ぜひ様々検討しながら、取り組みをはじめてみてください。
インプレックスアンドカンパニーでは、営業組織分析や戦略構築、リード獲得、商談に至るまで、豊富な経験を持つデジタル人材が営業のデジタル化をサポートしており、安心してお任せいただくことが可能です。
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