法人営業の基本BANT情報とは?項目ごとの活用ポイントを徹底解説
法人営業において、顧客企業に確認しなければならないBANTとよばれる必須項目があります。
どんどんブラッシュアップされているため、少し古い考えといわれてきているものの、BANTはとても基本的な項目です。
顧客と契約を結ぶ前にそれらをしっかり確認しておかないと、顧客ニーズも満たせずトラブルにさえなりかねません。
今回の記事では、この重要なBANTについて詳しく解説し、活用のメリットやポイントも紹介していきます。法人営業に携わるみなさんは、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.BANT(バント)条件とは?
- 1.1.Budget 予算はいくらか
- 1.2.Authority 最終決裁権者は誰か
- 1.3.Needs 誰にニーズがあるのか
- 1.4.Timeframe 導入時期はいつか
- 2.営業でのBANT活用のメリット
- 2.1.成約への戦略が組みやすくなる
- 2.2.組織で共有してパフォーマンスを向上できる
- 3.営業活動でのBANT情報の活用ポイント
- 3.1.予算規模は最優先で確認しよう
- 3.2.稟議手順を知ることで対策につなげよう
- 3.3.ウォンツではなくニーズを掻き立てよう
- 3.4.営業側からスケジュール案を先んじて提案しよう
- 4.BANT情報を活用して成約率を高めよう
BANT(バント)条件とは?
BANTとはBudget(予算)・Authority(決裁権)・Needs(ニーズ)・Timeframe(導入時期)の4つの言葉の頭文字をとったものです。
法人営業においては、顧客に確認するべき基本条件と言われています。
法人営業活動においては必須の条件として、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理ツール)において顧客の成約確度を判断する要素として活用されています。
それでは、BANTの個々の条件を詳しく見ていきましょう。
Budget 予算はいくらか
顧客が商品やサービスを導入するにあたって、計上できる予算枠です。
商談に入ったら、できるだけ早い段階で確認する必要があります。
許される予算規模に応じて、提案内容を変更せざるを得ないケースもあるでしょう。
あまりに予算が乖離していると、そもそも提案の時間が双方無駄になってしまいます。
そのため、予算の確認が後になればなるほど成約へのハードルは高くなります。
ただし、新規客などでまだ深い信頼関係が構築できていない場合や、顧客側からなかなか本音を聞き出せない場合もあるでしょう。
そういうケースでは、競合の事例などを出してみて、それとなく探ってみるテクニックも必要です。
Authority 最終決裁権者は誰か
営業アプローチは、顧客企業の中で決裁権を持っている相手に行うのが基本です。
窓口になる担当者では話の進むスピードも遅く、せっかく煮詰まってきた頃に「上に決裁を仰がないといけない」などと言われかねません。
早い段階から決裁権を持っている人物と直接交渉することができれば、スピーディなクロージングにつながるでしょう。
ただし、企業によっては予算規模によって決裁権者が変わることもあります。
その場合、商談ごとに誰が決裁権者かの確認が必要です。
BANT条件では、決裁権者の確認は重要項目であり、それを見極めてアプローチすることは、成約確度を高めることにつながります。
Needs 誰にニーズがあるのか
営業では、顧客企業に自社商材のニーズがあるのかどうかを認識することが重要です。
組織全体としてのニーズなのか、担当部署のみのニーズで全社の承諾は得ていないのかを見極めないとなりません。
場合によっては担当者個人のニーズに過ぎないおそれもあります。
ニーズの範囲次第では、あなたが抱えている商談の中でのその商談の位置付け、ひいては優先度が変化するのです。
ニーズを的確につかむには、単なる「欲しい」という評価だけでなく、「何のために欲しいのか」を探ってみる必要があります。
ニーズの深堀りによって、そのニーズが紐付いた課題にたどり着く可能性も生まれるでしょう。
その課題の解決方法こそが本当のニーズと考えて間違いありません。
Timeframe 導入時期はいつか
BANT条件のひとつとして、導入時期も重要です。
まだ成約していなくても、導入時期が具体的に決定しているのかどうかを確認しましょう。
決定していれば先方から見て優先度が高いと考えられます。導入時期がはっきりしていれば、営業も予定が立てやすいです。
早い導入を望んでいるなら、競合に先を越されないよう積極的なアプローチをしなければなりません。
営業でのBANT活用のメリット
営業活動において、BANT情報を活用することは主に以下の2つのメリットがあります。
・成約への戦略が組みやすくなる
・組織で共有してパフォーマンスを向上できる
それぞれに目を向けてみましょう。
成約への戦略が組みやすくなる
BANTを営業活動に活用して質問への答えを引き出すことにより、その提案に対して何がネックになっているのかを明らかにすることが可能です。
営業としてはそこから逆算して、具体的にどのようなアクションをとれば提案が通るのかを練り上げて、成約に近づける糧とすることができます。
組織で共有してパフォーマンスを向上できる
営業チーム全体で各営業先のBANT条件の認識をすり合わせておくことで、チームのパフォーマンスの向上が図れます。
例えば以下のような相談が、チーム内で日常的に可能になります。
営業1:A社はニーズ(=N)を感じていない
営業2:では私がA社の同業他社に導入して効果が出た事例を伝えてみたら?
営業2:B社は窓口になっている担当者に決裁権(=A)がない
部長:それなら次回の訪問に私も同行するので、決裁者に同席をしてもらおう
営業3:C社は予算(=B)が我々のデフォルトの提案より20%低い
営業1:では私がD社に導入できた20%削ぎ落としたプランをすすめてみては?
そうやってチーム全体の成約率をアップしていくことにつなげられるでしょう。
なお、営業チームという組織を効率化するためには「プロセスマネジメント」という考え方も有効です。以下の記事も参考にしてください。
営業活動でのBANT情報の活用ポイント
BANT情報を営業活動で活用する際には、以下の4ポイントが重要です。
・予算規模は最優先で確認しよう
・稟議手順を知ることで対策につなげよう
・ウォンツではなくニーズを掻き立てよう
・営業側からスケジュール案を先んじて提案しよう
それぞれについて、詳しく触れておきましょう。
予算規模は最優先で確認しよう
先方の予算規模によっては、当然ながら提案する商材の仕様の変更にもつながるものです。
そのため、最優先で予算規模を把握した上で、商談から仕様を変更した納品までのプロセスをシミュレーションしておく必要があります。
稟議手順を知ることで対策につなげよう
新規顧客の決裁権者は誰なのかを窓口担当者に聞いても、必ずしも教えてくれるとはかぎりません。
むしろ、自分の頭越しにアプローチされるのを嫌がって、口を閉ざされるおそれもあります。
この場合は稟議手順を聞くことで、最終決裁権者を推測することが可能です。
さりげなく、最終的な決定はどういうプロセスで行なわれるのかを聞いてみましょう。
中小企業であれば決裁プロセスはシンプルな場合が多いですが、大企業はかなり複雑なところもあります。
プロセスが複雑であってもゴールが明確であれば、どういうアプローチをするべきかという戦略を立てられます。
また、多くの企業では稟議以前のミーティングなどで「根回し」がよく行なわれているようです。
高額の稟議書が突然回ってきても、「はい、どうぞ」と承認する組織のほうが珍しいといえます。
顧客の社内でそのような根回しがどんなタイミングで、どういった形で行なわれているのかを担当者から探ってみましょう。
場合によってはその根回しのミーティングに同席するなどのアグレッシブな戦術も効果的です。
ウォンツではなくニーズを掻き立てよう
ニーズ(=N)は把握がしづらい項目です。
そして窓口担当者が答えるニーズは、実はウォンツであることが多いと認識しておきましょう。
ニーズとウォンツとの関係は、目的と手段に置き換えればわかりやすいでしょう。
例えば、「今日はどうしてもカラオケに行きたい」は一見ニーズですが、実はウォンツなのです。
本当のニーズは「思いっきり歌ってストレスを発散したい」と考えられます。
企業が「事務員の業務を効率化したい」は一見ニーズですが、これも実はウォンツです。
本当のニーズは事務員の業務効率化の先にあります。
例えば、「業務効率化によって事務員の残業を減らし、人件費を抑えたい」「手が空いた事務員に営業のサポートをさせたい」などのニーズが潜んでいるのです。
それを引き出すことで成約に一歩近づくアプローチが可能となります。
ニーズを明らかにするには、最初のウォンツに対して「なぜ?」と質問することです。
場合によってはそれを二回、三回繰り返す必要があります。
とはいえ、「なぜ?」としつこく聞かれると不快に思う人もいるかもしれません。
以下のおすすめ3パターンを場面に応じて使い分けて、適切な質問をしましょう。
・差し障りがなければ、〇〇〇〇が欲しい理由を教えていただけますか?
・〇〇〇〇があれば、どういう良いことにつながるのでしょうか?
・〇〇〇〇をすることで得られるメリットは何でしょうか?
これによって、本人が気づいていなかった潜在的なニーズが明らかになる場合もあります。
例)
営業:現在御社が求めていることは何でしょうか?
顧客:事務員の業務を効率化したいのです。
営業:効率化をすることで得られるメリットは何でしょうか?
顧客:事務員の手が空くことになります。
営業:差し障りがなければ、そうしたい理由を教えていただけますか?
顧客:手が空いた事務員を営業部門に異動するのです。
営業:異動することは、どのような良いことにつながるのでしょうか?
顧客:営業力を強化して競合に差をつけられるのです。
ここまで掘り下げると、当初の事務員の業務効率化というウォンツとは別のニーズである「営業力の強化」という根本的なニーズを満たすための別の提案を投げかけることが可能になります。
うまくいけば事務員の業務効率化のシステムと、営業力強化のシステムの両方の成約につながる可能性もあるでしょう。
あくまでたとえなので、直接的な質疑になっていますが、これを会話のなかで実践できれば自然と深掘りすることに繋がります。
営業側からスケジュール案を先んじて提案しよう
よほど喫緊の課題でないかぎり、商談の初期段階ではスケジュールは漠然とした状態であることが多いです。
その場合に営業サイドから納期を仮に設定してシミュレーションを行なったスケジュールを提案すると、顧客サイドにとって具体的なイメージが生まれます。
顧客のスケジュールは曖昧で緩いことが多いです。
それを鵜呑みにすると営業は振り回されてしまうことがあります。Timeframe(導入時期)がBANT条件に含まれているのはそのためです。
顧客サイドでスケジュールが未定であれば、先んじて提案してみましょう。
BANT情報を活用して成約率を高めよう
法人営業にとって重要なBANT条件について詳しく解説し、活用のメリットやポイントを紹介しました。
SFAやCRMが普及するにつれて、BANTの認知度も広がりつつあります。
従来では感覚に頼ってきた商談の適切な優先度を見極め、属人性を排した営業が可能となるはずです。
ここで紹介したBANTのそれぞれの活用のポイントを充分に理解した上で、営業アプローチに活用してください。